今の仕事は楽しいですか?と聞かれて、即座に「はい!」と言える人はあまり多くないのではないでしょうか。
私は今まで何度か転職をし、いくつかの会社で働いた経験があります。そのほとんどが営業職。営業は当然ノルマがあるので、一般的には結構ストレスを感じる仕事ですが、私はどの職場でも結構楽しみながらやってきました。
最初に就職した会社はかなりのブラック企業でしたが、そこでの営業成績は新人の中では常にトップ3。その次の会社でも何度かトップになったことがあり、成績は比較的良い方だったと思います。でも、実のところ、これまでの人生を通じて営業成績を意識して仕事をしていたことはほとんどありません。
その理由は、「結果を意識しすぎると、良い結果は得られない」と考えているからです。
「外発的動機」よりも「内発的動機」が大切
何かをやろう!と思う時の動機には、大きく分けて二つあります。それは、外発的な動機と内発的な動機です。
・外発的動機:収入を得たり誰かに評価をされることが目的で、そのことによって何らかの対価を受け取る場合。
・内発的動機:誰かに評価されたり対価を受け取るためではなく、それをする事に対して自分自身が喜びを感じる場合。
現在は成果主義を導入している企業が多いので、企業に勤めている場合は成果・結果を求められる事がほとんどで、当然「評価されるように成果を上げよう」と考える人がほとんどだと思います。
ある調査では、「成果に対する報酬を増やしたところ、逆に成績が落ちてしまった」という結果が出ているそうです。その理由は次のようなものです。
内発的動機がいかに大切かということがわかります。
若者は正しい方向に進化しているのかもしれない
最近の若い人たちは、モノを手に入れるためや収入を増やすため、または地位や名誉を得るためといった動機で働かなくなっているようです。
私が社会に出たのはバブルが終わりかけていた頃ですが、もう少し上の人たちはまさに真っ只中。彼らは景気が右肩上がりで、モノや楽しいことが溢れていた時代を体験しています。彼らは「何かを得るために仕事をする」という価値観が当たり前の時代に第一線で活躍していた人達です。
現在、会社の中で決定権を持っているのがまさにその世代。彼らは「結果をもっと評価して報酬を与えれば社員はやる気が出て、会社の利益も上がるはず」と考えますが、実はそうではないということです。
彼らから見ると、「今の若い人たちはやる気がない」とか「すぐに会社を辞めてしまう」というふうに見えるのかもしれませんが、全く違う価値観を押し付けられてしまったら当然です。彼らは外発的動機では動こうとせず、内発的な動機を求めているのだと思います。
そう考えると、もしかしたら新しい世代の若者達こそ、正しい方向に変化をしているのかもしれません。
日本は本来「内発的動機」で動いてきた
日本の会社は長らく年功序列、終身雇用というシステムを採用してきました。
私の世代が大学を卒業し就職する頃も、転職はまだまだ一般的ではなく、一度就職したら定年までその会社に勤めるのが一般的でした。ということは、日本における成果主義、年俸制、能力給といったシステムはここ20年から30年の歴史しかないということです。
この「成果主義」は、「仕事の結果を評価し、それによって給与決定したり昇進をさせたりする」ということなので、まさに外発的動機をベースにしたシステムです。
これに対して、「年功序列・終身雇用」は、言うなれば仕事の成果と給与や地位が関係しないわけで、その中での仕事に対するモチベーションは内発的動機がベースになっていることがわかるでしょう。
日本には数百年、中には1000年以上も続いている会社がありますが、それの会社は決して「いかに売り上げを上げるか」とは考えていません。彼らが考えているのは、
良い製品を作ったりサービスを提供したりすることによって、お客様にどれだけ満足してもらえるか
ということです。
私は日本が世界でも有数の経済大国に成長したり、世界でも最も古い文明を有する国になった背景には、長い間このような考えをしてきたことが大きいと考えられます。
何を「第一の目的に掲げるか」が非常に大切
会社であれば売り上げ、学校であれば成績を第一に考えることが多いでしょう。でも、企業は売上さえ上がれば良いのか?学校では成績だけが重要なのか?というと、そうではないはずです。もっともっと大切なことはたくさんあります。
ポイントは、「何を第一の目的にするか」です。それによって行動は大きく変わります。
一時期問題になった、産地偽装や賞味期限の改ざん。これらは「売上第一」「利益重視」の考えがベースになっていたから起こったことで、「より良い製品を作る」が最大優先であれば、絶対にあり得ないはずです。
企業が第一に考えるべき事は「売上」ではなく、製品の品質向上や顧客満足度アップです。ただ、これらは数値化する事が難しいため、よく言われる「見える化」することが容易ではありません。成果主義を取り入れている企業では、評価のしやすい「数値化できる目標」を好む傾向があり、その結果、本来は最も大切なことが二の次にされてしまうのだと思います。
組織の中でも、自分次第でできることはたくさんある
「そんなことは分かっているけど、会社の方針に逆らったらクビになってしまう」という意見もあるでしょう。本当は、そういう会社は今すぐ辞めて転職するのが一番ですが、なかなかそう簡単に転職はできないという人の方が圧倒的に多いと思います。
そんな時は、今の仕事に関して「あなたが喜びや達成感を感じること」を見つけてみましょう。
上で書いたように、あまりに「結果」を重要視(外発的動機が強くなる)と成果が上がらなくなってしまいます。逆に考えると、内発的動機を強くしていけば、結果として成果が上がると言えるわけです。
評価されることを意識しすぎると、失敗を恐れてチャレンジしなくなり、大きな成果を上げることも難しくなってしまいます。まずは、評価されるために仕事をすることから抜け出して、楽しみながら仕事ができるように工夫してみましょう。それができるようになり、そしてそれを継続していけば、結果が後からついてくるはずです。
どんな環境でも、自分次第でできることはたくさんあります。仕事を楽しみながら結果を得ることができるかどうかは、考え方と工夫次第です。