届いた図面の完成度はかなり高かったのですが、そうは言っても最初の案に対しては改善すべきポイントがいくつかありました。
「バリらしさと日本らしさを融合させたホテル」を目指し、日本のお客様に満足してもらえるワンランク上の快適さを追求するために、細かいところにもこだわりを持ちたかったのです。
バリ島にはお洒落なホテルがたくさんありますが、見た目は良くても、実際に泊まると細かい点で「惜しい!」と思うことが何度もありました。
例えば、日本人はお風呂にお湯を張って浸かることが多いですが、バスタブが浅かったり、バスタブが深くてもそこに充分なお湯を溜めるだけのお湯が供給できないことがあります。そこでバスタブは深めに、ボイラーも一般的なホテルより大きめにしました。
また、当初フロントはバリらしくオープンエアーで、それはそれで良かったのですが、冷房を完備するため室内にしました。
さらに、当時のバリではまだ普及し始めだったインターネットに各部屋で接続できるように、各ヴィラのリビングに回線を設置しました。
バリらしい雰囲気の中に、日本人目線での使いやすさや快適さを取り入れようと思ったのです。
問題発生
それからしばらくして、こちらからの要望を取り入れた図面が仕上がると同時に、初めて正式な見積が出てきました。やりたいことをいくつも追加したこともありますが、提示された見積金額は当初の予算を大幅にオーバーしていました。
「予算が足りない」
この時、プロジェクトが始まって以来、最も重要な決断を迫られました。
「妥協をするか、予算を増やすか」
これは本当に大きな問題でしたが、もしも予算を増やすことになったとしても、それをクリアできるという確信がありました。
初めてのことは経験がないから難しい。二度目は一度目よりも楽になる。
ヴィラのプロジェクトがスタートする前は「どうやって資金を集めよう?」ということが最大の問題でしたが、この時点では既に一度資金を集めることを経験し、達成しています。
「あれをもう一度やれば良いんだ」と考えると、それはそんなに難しいことではないように感じられたのです。問題はそれよりも、予算を増やしても収益が確保できるかどうかでした。
再度、予算を増やした場合について検証した結果「問題なし」の結論に達し、追加の出資者を募ることを決めました。そして実際に動き出してみると、追加予算の確保は前回よりもスムーズで、より短い期間で集めることができました。
その理由は次の3つだと思います。
- 既に具体的にプロジェクトが動き始めていたこと
- 私の中で「バリにヴィラを作る!」という思いが強くなっていたこと
- それまで応援してくれていた大勢の人達の存在が後押ししてくれたこと
最終的に、ヴィラのための資金は土地と建物を含めて、約7千万円になりました。ヴィラを作りたいと思った時の私には知識も経験も資金もなにもなく、それは途方もない夢のように感じられました。それを考えれば、まさに劇的な変化です。
この経験で、「できるかどうか?」ではなく「必ず実現する」という強い思いを持つこと、そしてその思いをたくさんの人々に伝え続けることの大切さをあらためて実感しました。
それが伝わったからこそ、たくさんの人々が賛同してくれて大きな資金が集まったのです。私はそれまでの全ての出来事に感謝をするとともに、さらに感謝の気持ちを強めて、次のステップへと進みました。