土地の契約が無事に終了し、次はいよいよ具体的なステップであるホテルの設計です。実は、ホテルの設計をお願いする建築家は最初から決めていました。
私はもともとホテルを見学するのが好きだったので、バリに行った時は観光の傍ら毎回いくつかのホテルを訪れていましたが、旅行会社をスタートしてからは「ホテルを見るのも仕事」ということでその回数が大幅に増えました。バリを訪れる回数が一気に増えたこともあり、有名ホテルはもちろん、ガイドブックに載っているホテルはほとんど見学しました。
そのひとつにレイアウトも雰囲気も良く、まさに私の好みにぴったりなホテルがありました。私たちが建てようと思っているホテルとほぼ同規模で、そこに泊まった時から、「いつかホテルを作るときは、ここを作った建築家にお願いしよう」と決めていたのです。
私はツテをたどってその建築家を探し、しばらくして実際に会えることになりました。初めてのミーティングの場所に現れた彼は物静かな方で、私がヴィラを作りたい理由やバリに対する想いを伝えると、快く設計の依頼を受けてくれました。
いよいよ設計がスタート
土地の広さは理想的なホテルを建てるには充分とは言えませんでしたが、限られたスペースの中でいかに理想に近いホテルを作ることができるかのチャレンジです。設計を依頼するためには、具体的なヴィラの棟数、部屋の大きさに始まり、それぞれのレイアウトなど、決めるべきことはたくさんあります。いろいろなホテルのレイアウトや写真に加えて、それまでに訪れた時の印象なども考慮しながら何日も、何日も考えました。
ある程度まとまった段階で打ち合わせをし、そのたびに新たな課題が出てきてはひとつひとつ解決していく。バリと日本を行ったり来たりしてそんなことを何度も繰り返しながら、少しずつ構想をまとめていきました。それまでにたくさんのホテルを見てきたとは言え、ホテルの裏側、いわゆるバックヤードがどうなっているかなどの知識はありません。その点については、いくつものホテルを設計してきた建築家としての経験を元にアドバイスをもらって進めました。
土地の形を考慮しながらフロントや各ヴィラの配置、部屋のレイアウトなどが決まり、そして私から各部屋の設備やイメージやその他の細かい要望を全て伝えた上で、詳細設計はお任せして図面を描いてもらう事にしました。
できるだけ具体的にイメージを伝えられるよう、何度も打ち合わせをしていたので、設計を依頼する頃には私の頭の中にあるイメージはかなり鮮明なものになっていました。それでも、ホテルの正式な図面はそれが「形」になるということなので、本当に楽しみに完成を待ちました。
私は何度も、これからホテルが建つ予定の場所に何度も足を運びました。そこはまだ何もない更地の状態。そこにホテルができたらどんな感じになるのだろう。まだ図面すらできていませんでしたが、そこに立ってそう考えるとワクワクしました。
図面ができた!
そして届いた最初の図面。それは数十ページもある厚いもので、表紙にはプロジェクトの名前が印刷されていました。全体図に始まり、フロント、各ヴィラのレイアウトやスパの図面など、ページをめくる度に感動と嬉しさが込み上げてきました。図面は既にかなりの完成度で、私は何度も何度もページをめくりながらこう思いました。
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目の前にある図面を見ていると、まるで自分がヴィラの中にいるかのようにイメージが拡がり、それと同時にこのプロジェクトに賛同してくれた人達の顔が次から次へと浮かんできました。大勢の人達のエネルギーに後押しされていることをあらためて実感し、私は「こんなにたくさんの人達が応援してくれているんだから、このプロジェクトは絶対に上手くいく!」と確信しました。