資金の目処が立ったことで、プロジェクトは大きく動き出します。
まず最初にやるべき事は土地探し。ホテルにとってはロケーションが重要なファクターで、それが成功できるかどうかの鍵を握っているといっても良いでしょう。それに、土地の広さや形が決まらないことには設計をスタートすることもできません。
予算内でいかに良いロケーションの土地を探すことができるか。全てはそれに尽きます。当たり前のことですが、良い土地は高い。でも私達の予算は限られている。このジレンマの中で、どこまで希望に合った土地が見つけられるだろうか。そんな思いの中で土地探しがスタートしました。
日本とバリの違いを感じた出来事
いくつもの候補地をピックアップし、広さ・形・ロケーション・価格などから絞り込んでいくのですが「ここはいい!」と思うところは価格が高いため予算的に難しく、予算的に合うところは「これだ」と思えるところがありませんでした。
なかなか良い土地に巡り会うことができないまま、時間だけが過ぎていきます。
探し始めて数ヶ月。ようやく良さそうな候補地が見つかりました。そこはオーナーがとある事情ですぐに売りたがっている土地で、それまでに見たところに比べるとロケーションも良く、広さも充分で、形もなかなか。非常に魅力的な場所です。唯一の問題は、私たちの予算を若干オーバーしていることでした。
「できるだけ早く売りたいようだから、支払条件を提示して交渉してみよう」
きっと相手はすぐにお金が欲しいのだろうと考え、すぐに支払うことを条件に価格の交渉をすることにしたのです。その結果、こちらの思惑通り「すぐに送金するなら」という条件で値引きに応じてくれました。
「これで土地が決まった!」
仮契約をし、手付金の支払期限を決めましたが、指定された支払期限まであまり時間がありません。日本ではすぐに送金の手配を進めたのですが、実はこれより少し前にバリ島で爆破テロがあったため、その影響がありました。高額の送金をするためには銀行にいろいろな書類を提出する必要があり、思ったよりも時間がかかってしまったのです。
必要な書類が揃い、「さぁ、送金!」と思った矢先、土地のオーナーから信じられない連絡がありました。それは、「別の人に売ることにしたので、あなたたちには売れない」との連絡でした。やっと見つけた理想的な土地です。それに、こちらは既に仮契約もしていたので、そんな話をすんなり受け入れる訳にはいきません。
私たちは仮契約していることを楯に交渉しましたが、先方も「既に決めたことだから」と一歩も譲りませんでした。何度も交渉を試みましたが最終的には諦めざるを得ませんでした。それまで全て順調に進んでいたように思われたプロジェクトでしたが、この時、バリと日本との常識や習慣の違いという壁にぶち当たったのです。
予想外の出来事も「良い結果に繋がっている」とプラスに考える
決まったはずの土地が買えなくなった時は大きなショックを受けましたが、私はすぐに気持ちを切り替えてこう考えました。
「これはきっと、ここよりも良い土地が見つかるっていうメッセージに違いない」
既に起こってしまった出来事はどうにもなりません。悩んでも過去は変えられないからです。仮にマイナスな出来事に遭遇したとしても、きっとその先に良い結果が待っているに違いないと、常にプラスに受け止めることが大切です。
「大丈夫。きっともっと良い場所が見つかるはず」という思いとともに、再び土地探しをスタートした結果、すぐに前回より良い条件の土地が見つかります。街のレストランへのアクセスも良く、周りはのどかな田園風景で、滞在中はのんびり過ごし、遊びに行くにも便利な場所です。ありがたいことに金額も予算内に収まっていました。
「ここにしよう!」
三度目ならぬ二度目の正直。そして、今回は契約から支払まで全て順調に進みました。何から何まで思い通りに行く・・・ということはありません。何をするにも、壁に当たることはあるのです。予想外の結果になってしまった時、できるだけ早く気持ちを切り替えてポジティブに考えることが大切ということをあらめて感じたできごとでした。
こうしてまずは最初の第一歩、無事にヴィラの建設予定地が決定したのでした。