どうして、バリ島でホテルをオープンしたいと思ったのか。そのきっかけは、それより10年近く前まで遡ります。
私は20代の頃から「自由な人生を手に入れる」という目標を掲げ、それが達成できれば幸せで楽しい人生を送ることができる、それこそが人生における成功だと信じていました。そのために何人もの成功者に会っていろいろなことを教わり、セミナーに出てたくさんの事を学び、常に目標達成を意識して行動していました。
その結果、30代の中頃にはある程度の結果を得て、満足できるだけの自由を手にすることができました。それは「大成功」と言うにはほど遠い状態でしたが、当時の私にとっては十分でした。長い間追い求めたライフスタイルを手にしたのだから達成感もいっぱい。ずっと望んでいた生活を満喫し、毎日が本当に楽しい日々を送っていました。
私はその状態がずっとずっと続くと信じていたのですが、実際には違いました。確かに最初は毎日が楽しかったのですが、時が経つにつれて満足感が薄れていく・・・。そんな感じでした。楽しいことは楽しいのですが、ワクワクすることはどんどん少なくなっていきました。
「なぜだろう?」
すぐには分からなかったのですが、ある時何かがひらめき、そして、しばらくしてからその理由が明確になりました。
「自分に足りなかったものはビジョンだ」
私がずっと目標にしていたのは「自由な人生を手に入れる」ことで、それは最初から明確でした。でも、「何のために自由になりたいのか?」が明確ではなかったのです。つまり、目標(どうなりたいのか)はハッキリしていたものの、目的(なんのためにそうなりたいのか)が不明確だったことに気付いたのです。
ビジョンとは、人生における「目的」のことです。本当に大切なことは、「何を手に入れたいのか」ではなく「それを手にしてどうなりたいのか、何のためにそれを手に入れたいのか」だったのです。
「よし。明確なビジョンを決めよう」
ワクワク感がなくなった理由が分かった私は、すぐにそう思いました。
ところが、それはそう簡単には見つかりませんでした。いろいろ考えてもなかなか思い浮かばない。いつも心のどこかにビジョンについて思う気持ちはありましたが、「これだ!」というものに出会えずに時間だけが過ぎていきました。そしていつの間にかビジョンについて考える時間が次第に少なくなり、私はなんとなく以前の生活に戻っていってしまったのです。
ハワイで最高のベトナム料理に出会う
そんな私に変化が訪れるきっかけになったのは、それから数年後に訪れたハワイでのできごとでした。
そのころはもうビジョンについて考えることもほとんどなく、時々ふっと思い浮かんではすぐに消えていくという感じになっていました。
私はもともと旅が好きなので、毎年必ず何度か海外旅行に行っていました。目的地はほとんど学生時代に訪れてから大好きだったアメリカでしたが、いつも西海岸が中心だったため、ある時「たまには違うところに行ってみよう」と思い、初めてハワイへの旅行を計画したのです。
そしてその旅も終わりに近づき、日本に帰国する前日のことです。当時とても興味があったベトナム料理店に行きました。今ではベトナム料理もとてもポピュラーになり、フォーや生春巻きを知らない人の方が少ないほどだと思いますが、当時の日本はベトナムレストランも非常に少なく、なかなか食べる機会がなかったのです。
出発前に読んでいたガイドブックで、たまたまアラモアナ・センター近くにベトナム料理店があることを知ったため、さほど期待もせずにお店に行きました。メニューを見ても知っているのは生春巻きくらい。他はなにがなんだか全く分からないため、とにかくお店の人におすすめをピックアップしてもらいました。
テーブルに運ばれて来たのは見知らぬ料理ばかり。正直な話、期待よりも不安の方が大きかったのですが、初めて体験したベトナム料理はまさに絶品!それまでのハワイでの楽しかった出来事が全て飛んでしまうくらい、あまりにも美味しくて感動でした。そして料理を食べながらある決断をしました。
「これは絶対に本場で食べる!」
次の旅行の目的地が決まりました。そんな理由で決めたベトナム旅行でしたが、そこでの出逢いが、私の人生を大きく変える事になるのです。