ホテルのオープンは、私にとって人生最大の出来事でした。そしてきっと、その夢の達成に協力してくれた大勢の人々にとっても同じように素晴らしい出来事だったことでしょう。
まさか、ホテルがオープンしてから一年半後に、最も信頼していた共同経営者に全ての権利を奪われて全てを失うことになろうとは・・・。ホテルが予想外の短期間でオープンできたことも驚異的だと感じましたが、この時の驚きはそんなものではありませんでした。
全てを奪われたということは、ホテルに出資した資金も全て失うということで、それは全額が私個人の負債となることを意味しています。
その額、およそ一億円。
本当に「まさか!」の出来事です。まるで買ってもいない宝くじでも当たったかのような衝撃。それだけでも大変な事ですが、さらに身に覚えのない罪を着せられて警察に連行され、結果的に約2ヶ月もの間バリの警察と刑務所に収監されてしまいました。
全てを失い、大きな負債を抱えた上に、異国の地で自由まで奪われるという人生でも最悪の出来事でした。まさか私の人生にこんなことが起こるとは、想像すらしていませんでした。
ホテルを作りたいという夢が出来て、それが現実のものとなって人生最高の瞬間を味わい、そして全てを失ってしまうまでの期間はわずか5年。抱えてしまった一億円という金額はとてつもなく大きなもので、私は今でも毎年返済を続けています。
すなわち、今の私は経済的にはこれまでの人生で最低の状態で、さらに、それ以外にも非常に厳しい状況に置かれているのが現状です。
しかし、状況的にはどん底にいますが、では絶望して夢も希望も失ってしまったのかというとそうではありません。
実は、人生を通じて一番幸せを感じていることが出来ているのは「今」なのです。この出来事に遭遇する前の人生も含めた私の一生の中で、最も幸福感を感じています。
そんな環境に置かれているのになぜ?その理由は、この経験を通じて気付いたことがあるからです。
幸せかどうかは環境ではなく、自分の心が決める
一夜にして全てを失い、そして海外の刑務所で2ヶ月を過ごすという経験から、本当の幸せとはなにか、本当の自由とはなにか、という事についてたくさんの気付きがありました。そしてそれらの気付きを自分なりに整理し、さらに深く考え、そして日々の生活で実践することによって、私の人生は大きく変わったのです。
確かに日々の生活はそれまでに比べて非常に困難な状況になりました。状況は最悪です。しかしその反面、たくさんのことを掴んだり学んだりすることができたおかげで、私の考え方が大きく変化し、人生の質に大きな変化が起こったわけです。
もちろん、当初から起こったことをそんな風にポジティブに捉えることができたわけではありません。一番最初は「立ち直れるだろうか?」と思うほど落ち込んだ状態でしたが、「起きてしまったことは受け入れるしかない」「きっとこれは何かのメッセージに違いない」などと、自分で自分に言い聞かせるようにしながら、徐々に受け入れていきました。その結果、今の私があるのです。
体験したことは「一億円の負債を抱える」という大きなマイナスで、さらに、たくさんの人々に迷惑をかけてしまいました。でも、残りの人生にとっては大きなプラスになる、かけがえのない貴重な経験だったと思っています。