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021:ダディットとの出逢い

Prisoner

逮捕されてから数日間は取り調べを行うため警察の留置所に拘留されたのですが、私が外国人ということもあり、その間は独房に入れてもらえることになりました(後で分かることですが、これも弁護士から警察への袖の下のおかげでした)。

警察に連行された段階では「すぐに釈放されて数日後には帰国できる」と思っていたのに、わずか数時間後には「いつ帰れるかもわからない」という状況になってしまった。初日の夜はあまりにも短かい時間に起こった、あまりにも大きな状況の変化を受け入れる事ができず、様々なネガティブな思いだけが頭の中をいっぱいに満たしていました。そして「この先どうなるんだろう?」という不安の中一睡も出来ず、差し入れしてくれた食事も何も喉を通らずに朝を迎えました。

翌日は弁護士事務所の日本人スタッフが何度も面会に来てくれて、取り調べや裁判に関わるサポートはもちろん、それ以外にも私を気遣っていろいろな話をしてくれました。不安と緊張の中で、短いながらも日本語で会話ができるその時間は唯一とても気持ちが安らぐ時間でした。

この時、既に全ての黒幕がパートナーであることは把握していましたが、彼にはまだそのことは伝えていなかったため、ホテルのスタッフも毎日交代で来てくれて、さまざまなサポートをしてくれていました。彼らと会えるそんな時間も、少しだけ心が落ち着きました。

最大優先で解決すべきはドラッグの件ですが、同時にホテルの名義についてどう対応するかも考えなくてはなりません。弁護士と相談した結果、「一日も早くパートナーの彼に直接問いただした方が良い」という結論に達しました。

遂にカミングアウト!その時の反応は?

早速彼に「相談したいことがあるので警察まで来て欲しい」と伝えると、まだバレていることを知らない彼は二つ返事で来てくれました。面会の瞬間はいつものように、私のことを心から心配しているような顔をして、力づけるために言葉を掛けてくれていました。でも、私がホテルの名義のことを話題にし、こちらが全てを把握している事を彼に伝えると彼の顔が一変し急に目つきも変わり、その場の空気が一変したのです。

彼はそれらの事実を否定もせず、無言でその場から立ち去ると、それ以降はこちらから電話をしても一切繋がらなくなりました。それが私と彼との最後の会話になったのでした。

弁護士に対して「ホテルは今後一切のサポートをしない」という通達が来たのは、その翌日のことでした。

さらなる問題

どんどん問題が大きくなり、対処すべき事もどんどん増える。自分がそれらを受け入れる速度よりも、問題が増える速度が上回っていてどうしたら良いかを冷静に考えることが出来ない。そんな、現実を受け入れるだけでも精一杯という状況の中、取り調べが終わって部屋に帰ろうとすると警察の担当者に声をかけられ、こう告げらました。

他に部屋がないので今日から同じ部屋に同居人がくる

えっ?・・・。心の中で声にならない叫び声を上げました。ただですら問題だらけなのに、またしても新たな問題の発生です。これからどうなるかが全く分からず不安なところに見も知らない人が来る。不安な気持ちがますます膨らみました。

夜になってやってきたのはガンジャとマッシュルームのタトゥーを入れた、どう見てもジャンキーなダディットというインドネシア人。その見た目に圧倒され、同じ部屋にいながら一言も声を掛けず、会話もせずに時間だけが流れていきました。

「自分のことだけで精一杯なのにこんな相手に関わりたくない。出来ることなら放っておいて欲しい」

それがその時の私の本音でした。

できるだけ目を合わさず、話をしたくないという空気を精一杯出しているつもりでしたが、私の小さな希望は打ち砕かれ、しばらくすると彼の方から話しかけてきました。私は仕方なく会話をしつつも、とにかく関わりたくない一心で、できるだけ素っ気ない態度でできるだけ早く話を切り上げようとしましたが、彼には会話をやめる気は全くないようで、次から次へと話かけてきました。

私はあきらめて、彼の気が済むまで会話に付き合うことにしました。後になって振り返れば、彼との出逢いは私にとって非常に大きな支えになってくれる素晴らしい出来事だったのです。

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