旅行会社を運営するようになってからは、毎日何らかの形でバリに関わるようになりましたが、それはホテルを作るという夢をより明確にするのにとても役立ちました。
それまでに私が教わってきた「夢を実現するために大切なこと事」のひとつを毎日実践できるようになったからです。
夢を実現するためには、それがまるで現実かのように具体的に、明確にイメージすることが大切
旅行会社なので、できるだけたくさんのホテルについての情報を集め、特徴を理解する必要があります。ロケーション、雰囲気、サービス、間取りなどなど。バリに行くたびに可能な限り多くのホテルを訪れて自分で見て、感じて、体験するようにしました。
考えれば考えるほど、イメージが明確になっていく
日本にいてもバリのことを考えない日はありません。そして、時間さえあれば将来オープンするホテルについて「どんな雰囲気にするか」「部屋数はどうする」「どんなサービスがあったらお客様が喜んでくれるだろう」などと考えを巡らせて頭の中でどんどんイメージが拡がり、より具体的になっていきました。
当時バリを訪れる観光客は毎年増加しており、日本からのお客様も着実に増えていました。それに伴い、それまでにないペースで新しいホテルやショップなどが作られ、バリは急激に変化をしようとしている時でした。
旅行会社を始めるまで、ホテルのオープンは「将来的な夢」という感覚が大きかったため、「実際に建てるとしたら・・・」と考える事はあまりなかったのですが、頭の中のイメージが次第に明確になるにつれ、より具体的な考えが芽生えてきました。
「実際にホテルを作るとしたら、どれくらいの費用がかかるんだろう?」
私はバリに行く度に、できるだけたくさんのホテルを見学するようにしていて、それまでに数十件のホテルを訪れていました。中にはフォー・シーズンズやリッツ・カールトンといった巨大なホテルもありますが、多くは私が目指すような小さなヴィラタイプのホテルで、その中には「こんな感じのホテルが良いなぁ」というところがいくつかありました。
そこで、旅行会社がある程度軌道に乗り始めたころ、彼に「ここと同じような感じホテルを作ると幾らくらいかかるかな?」と質問してみました。作りたいホテルのイメージが徐々に具体化してくる中で、実際にそれを作るための予算を知ることによって、もっとイメージが具体的になると考えたからです。
当時のバリでは観光客の増加により土地の価格がどんどん上がっている状態でした。もちろんロケーションによって土地の価格はピンからキリまでなので、どこに作るかによって必要な予算は大きく変わります。ビーチサイドや街の中心など、いわゆる一等地に作るのは到底無理。
そこで私が想定したエリアは、バリで最も賑やかな「クタ」の北側、当時新たに人気が出てきていた「スミニャック」というエリアでした。いくつかヴィラは点在するものの、全体的に田園風景が拡がる静かな場所で、空港からのアクセスも比較的良好。価格とのバランスを考えるとベストと思われる場所でした。
ビジョンが具体的になった瞬間
実際に価格を調べたところ価格のバラツキはあるものの、安い土地を見つけることができれば、5,000万円程度で建てられそうということがわかったのですが、正直なところ、ホテルを建てる予算としては思ったよりも少ない金額でした。そして、数字が具体的になったことで、それまでは漠然と「いつか叶えたい」と思っていた夢が一気に現実的な夢へと変わったのです。
この金額は、「ホテルを建てる予算としては」予想したより少なかったですが、私にとっては非常に大きなものです。当時の私にはそれだけの資金を調達する術もなかったので、「いつまでに作る」という具体的な目標を掲げることはできませんでした。ただ、例えば都内で住宅を取得することを考えると決して叶わない夢とは思えない、もしかしたら手が届くかもしれない・・・とイメージすることができただけでも大きな前進でした。
人は「無理だ」と思えば行動を起こすことはしませんが、「もしかしたら出来るかも」という思いがあり、そしてそれが心の底から実現したいことであれば、それが原動力となって行動を起こすことが可能です。
その時の私がまさにその状態で、それまでは「いつか叶えたい」「いつか行動しよう」と思っていたものが「動きたい!」に変わった瞬間でした。
旅行会社を運営していると、バリのホテルの稼働率や実際にホテルが部屋を販売しているレート、シーズンごとの予約の変動などがわかります。バリでは各国ごとに別々のレートを設定しているホテルも多く、中でも日本人向けのレートは高めになっているケースがほとんどでしたが、その代わりに日本人は他の国の人達に比べてサービスレベルへの要求が高いため、その要求に応えることが出来なければお客様は来てくれません。そして、インターネットの普及によって口コミの評判があっという間に広まるようになっていたので、一旦悪い評判が立ってしまうと挽回するのは容易ではありませんでした。
私は旅行会社を運営しながら、いろいろなホテルの状況を参考に、実際にホテルの収支をシミュレーションしてみました。当時、彼はまだホテルのマネージャーを続けていたので、運営コストなどの実際のデータが入手できたのも幸いでした。
毎月の稼働率やルームチャージ、人件費や光熱費などの必要経費を計算し、それらをこれから作ろうと思っているホテルの規模に当てはめて収支を算出してみました。
それらの情報をベースに慎重かつ総合的に判断をした結果、何らかの方法で必要な資金を集めることさえできれば、それを元にホテルを建てても充分投資効果が期待できるという結論に至りました。この瞬間、ホテルを作るという夢は現実になりました。「いつかではなく、今すぐでも作りたい」と心から思えたのはこれが初めてのことでした。