「バリ島でホテルを作る」というビジョンはできたものの、では、それまでと何かが変わったか?というと、実は何も変わりませんでした。その理由は、そのビジョンは「いつか叶えたい」とは思っていても、それがすぐに実現するとは思っていなかったからです。
それは例えば、一度もサッカーをやったことがない少年が、ワールドカップの試合を見て感動して「将来はJリーガーになるぞ!」と思うようなものです。
ただ一つ変わったことは、バリ島という場所がそれまでの「遊びに行く」ところから、もしかしたら「自分の夢を叶える」ところになるかも知れない。そう意識し始めたことくらいでしょう。
それでも、自分の中で大きな夢ができたことは非常に嬉しいことでした。いつか将来、バリ島でホテルができたら良いな。もしかしてそれが叶う時が来るかも知れない。まるで地図にも載っていない遙か彼方の目的地を目指す旅のように、そこにたどり着いた時の事を考えるだけでワクワクしました。
その頃は定期的にバリ島に行っていたので、この新しい夢ができた時には、既に次のツアーの予定が決まっていました。何度も訪れるうちに馴染みのショップやレストランがいくつもできて、どちらかというと、旅行に行くと言うより「通っている」という感じです。
バリ島の魅力のひとつは、プライベートなヴィラにリーズナブルな価格で泊まれること。ベッドルームの他にリビング、キッチンなどがついていて、ほとんどがプール付きという贅沢な作りなのですが、他のリゾートとは比べものにならないくらい安く泊まれます。ただ、部屋数があまり多くないため、人気のあるホテルはすぐに満室になってしまいます。私はいくつかお気に入りのホテルがあったので、できるだけ早め早めに予約をして部屋を確保するようにしていました。
その時ももちろん早々とホテルを抑えていたのですが、直前になって急遽スケジュールの調整がつかなくなり、予定を変更せざるを得なくなってしまいました。直前になって旅行の予定を変更しなければならないことなど、初めてのことでした。おまけに次に行けるのは年末年始。果たして、泊まりたいホテルが取れるかどうか・・・という感じです。
案の定、第一希望のホテルも満室。第二希望もダメ。ヴィラタイプではない普通のホテルなら空きはあるのですが、そこはどうしても譲れません。その後、どのホテルもことごとく満室で部屋を確保することが出来なかったのですがしばらくしてあるホテルから「キャンセルが出た」との連絡があり、ようやく宿を予約することができました。
予定が変わったおかげで泊まれたホテル
それから数ヶ月。ベトナム旅行で夢ができてから初めてのバリです。
年末年始のバリはそれが初めて。というよりも、海外で年を越すこと自体が初めての経験でした。そこで、初めての年越しツアーなのだから、旅行そのものもいつもと違うものにしようと考えました。
それは、「何もしないでノンビリすること」です。
海外でも国内でも、旅行に行く時は事前にできるだけ下調べをして、ほぼスケジュールを組んでから出かけるのがいつもの私のスタイルなのですが、今回はあえてそれをせず、その時の流れで過ごしてみようと思ったのです。
今回泊まるホテルのことは、以前から知ってはいましたが泊まるのは初めてでした。繁華街に近いロケーションだったので「少しうるさいかな?」と心配でしたが、全くそんなこともなく、部屋もサービスも全て大満足。非常に快適に過ごす事ができて、私の中でお気に入りのホテルのひとつになりました。予定通りの日程でバリに来ていたら他のホテルに泊まっていた訳なので、「予定が変更になったおかげでここに泊まれた」と考えると、本当にラッキーだったと言えるでしょう。
そのホテルのオーナーは欧米人でしたが、実際に運営を任されているゼネラル・マネージャーは日本語も流暢にこなすバリ人でした。彼とは予約の時からメールで直接やりとりしていたのですが、今回はのんびりしようとあまり予定を入れていなかったためホテルにいる時間が長かったため、彼と会う機会が度々ありました。
彼はとても気さくで、何度か会話をする中ですぐに仲良くなりました。いつもなら滞在中の予定はほとんど決まっているのですが、今回はあえて予定を入れていなかったため、時間的な余裕がありました。そこで、せっかくだから一緒に食事でもしないかな?と思って誘ってみると、すぐに「OK」ということになり、早速その晩、近くのレストランでディナーをすることにしたのです。
その時の私は、ただ単に「バリの友人がひとり増えたらいいな」と思っただけなのですが、その後のレストランでの会話をきっかけに、私の人生は思いもよらない展開を迎えることになりました。